前回、「バックキャスティング」でビジョンを描くことをお伝えしました。今回はビジョンに到達するために必要なスキルの一つ、「物事のつながりを考えて構造を見る力」についてです。
最初のポイントは、問題の症状への「対処療法」と、症状を起こしている原因へ働きかける「原因療法」を区別するということです。例えば、海岸にごみが散乱していたとします。皆でビーチクリーンを行ってきれいにします。これはとても大事な取り組みですが、放っておくとまたごみだらけになってしまいます。そこで、ビーチクリーンをしながら、ごみを捨てない町にしていくにはどうしたらいいかといったことも考えないといけません。対症療法だけでは、いつまでたっても問題は解決しないからです。
次のポイントは物事が「どうつながっているの?」と考えることです。ビーチにごみがあるのはどうしてかーをたどって考えてみましょう。また、ビーチにごみがあった場合となかった場合は、その先がどう違ってくるかも考えてみましょう。私たちが生きている世界は、いろいろなものがつながっていますから、つながりを考えることが大事なのです。この考え方を「システム思考」といいます。「つながり思考」と言っても良いですね! これが分かれば、根本的な原因にも働きかけることができるでしょう。
外で何気なく捨てたごみは風に飛ばされ、川に流され、海洋ゴミになります。逆に自分がごみを1個拾えば、それを見ている人にも影響を与えることができるでしょう。
目の前の問題や思いついた解決策に飛びつかないで、本当に変えないといけないものを変えるにはどうしたらいいか。物事がどうつながっているかに注目することが鍵です。
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
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