
今月はこれまでお伝えできていなかった大事なテーマをお届けしたいと思います。今回は「森林」についてです。
日本は世界有数の森林国です。世界の森林率の平均が約31%に対し、日本は世界第3位の約66%。でも私たちの使っている木材の約60%は外国からの輸入です。どうしてでしょうか。
理由の一つは値段です。日本の山は険しいので手入れや運び出しが大変。平地に森林が広がっている外国から木材を船で運んできたほうが安いことが多いのです。でも、外国からの輸入が多くなると、日本の森林の木を切ったり手入れをする人が減って、森が荒れ、林業に携わる人も減ってしまうという悪循環が起こってしまいます。
森林には「天然林」と「人工林」があります。日本の森林の40%強は、人間が苗を植えて木を育てる人工林。雑草に負けないように下草を刈ったり、少し大きくなったら間伐(間引き)をして、元気な木が育つよう場所を空けたりして、手入れをしてあげる必要があります。そうしないとひ弱な森になってしまい、水を蓄えたり土砂崩れを防いだり、水や空気をきれいにしてくれたり、二酸化炭素を吸収してくれたりする大事な役割が果たせなくなってしまいます。
私の住む熱海市は海が有名ですが、実は市の面積の約60%は森林です。この熱海の森林を守り育てようと、間伐作業を行ったり、森の大切さを伝えてくれる頼もしい仲間がNPO法人キコリーズです。平日は自分の仕事をし、週末を中心に林業を行う副業スタイル。若い人も女性も、初めてチェーンソーを持つ人もいます。林業のプロに任せるだけでなく、大事なことをできる人がやるという素敵な活動で、何より楽しく森とかかわっているのが本当にいいなあぁと思います。
森林に恵まれている日本が、森を大事に育て守るのは世界に対する責任でもあります。そして森も木も、人間が誕生する前から地球にありました。森について知ること。行ってみること。木でできたものを大事に使うこと。森林も木も私たちと同じ「いのち」として、守り育てることを意識してみませんか。
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
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